裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第一号に掲げる手続又は第六号に掲げる処分についてはその手続の申立人である債権者又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限り、第五号に掲げる責任制限手続については責任制限手続開始の決定がされていない場合に限る。
一 債務者の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この節において「強制執行等」という。)の手続で、債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権若しくは財団債権となるべきもの(以下この項及び次条第八項において「破産債権等」という。)に基づくもの又は破産債権等を被担保債権とするもの
二 債務者の財産に対して既にされている企業担保権の実行手続で、破産債権等に基づくもの
三 債務者の財産関係の訴訟手続
四 債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
五 債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)第三章又は船舶油濁損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)第五章の規定による責任制限手続をいう。第二百六十三条及び第二百六十四条第一項において同じ。)
六 債務者の財産に対して既にされている共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。第百三条第五項及び第二百五十三条第四項において「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(以下「外国租税滞納処分」という。)で、破産債権等に基づくもの
2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
3 裁判所は、第九十一条第二項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、第一項の規定により中止した強制執行等の手続又は外国租税滞納処分の取消しを命ずることができる。
4 第一項の規定による中止の命令、第二項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。